趣味:読書
内容 ── 実際、何をしている時間なのか
読書という趣味の中身は、本を読む時間だけではありません。私の場合、実感としては半分くらいが「読む前」と「読んだ後」に使われています。
書店をぶらついて平台を眺める時間。図書館の棚を端から見ていく時間。読み終えたあとに記録アプリへ一行だけ感想を書く時間。積んだままの本を並べ替えて満足する、あのよくわからない時間。全部ひっくるめて読書という趣味です。
読む形も、いまは三つに分かれます。紙、電子、耳(オーディオブック)。文化庁の「国語に関する世論調査」(令和5年度)では、電子書籍を「利用する」人が40.3%。ふだんは紙、通勤中は電子、皿を洗いながらは耳、と使い分けている人はもう珍しくありません。
ジャンルの話をすると、小説だけが読書ではない、と最初に言っておきたい。ノンフィクション、エッセイ、新書、詩集、写真集、実用書。文庫の巻末解説だけ読む人も知っています。それでいいんです。
魅力 ── 6割が読まないから、面白い
さっきの調査には、けっこう衝撃的な数字があります。1か月に本を「読まない」と答えた人が62.6%。読む人は36.9%。しかも読書量が「減っている」と答えた人が69.1%で、その理由の最多が「情報機器で時間が取られる」43.6%でした。
(補足しておくと、この調査は令和2年度に面接から郵送方式へ変わっているので、過去の数字とそのまま比較しにくい面はあります。それでも傾向としての「本離れ」は否定しにくい)
つまり、月に2〜3冊読むだけで、あなたは上位数%に入ります。個人的には、これが読書という趣味のいちばん現実的な魅力だと思っています。ランニングで上位数%に入るのは大変ですが、読書は月3冊でいい。
もっと内面的な話もしましょう。
頭の中が静かになる。
よく引用されるのが、英サセックス大学の研究者が2009年に発表したとされる「6分間の読書でストレスが約68%減る」という数字です。ただしこれ、報道で広まったわりに査読論文として確認しづらいので、私は「そういう説がある」くらいの扱いにしています。それでも、寝る前に紙の本を20ページ読んだ日と、スマホを見て寝た日で、翌朝の頭の重さが違うのは自分の体で何度も確かめました。
他人の10年を数時間で借りられる。
これは実利です。誰かが人生をかけて考えたことが、1,500円と3時間で手に入る。こんな効率のいい買い物は他に思いつきません。
言葉が増える。
語彙が増えると、自分の感情に名前が付けられるようになります。「なんかモヤモヤする」が「これは徒労感だ」に変わると、対処の仕方まで変わってくる。地味ですが、これがいちばん生活を変えました。
始め方 ── 最初の1冊で9割決まる
正直なところ、初心者がつまずく原因はほぼ一つです。最初の1冊を間違える。
意識の高い人ほど、いきなり『資本論』や話題のビジネス書500ページに挑んで、40ページで挫折します。私も昔やりました。ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を「教養だから」と買って、登場人物の愛称に混乱して3週間で放り出した記憶があります。
だから最初は、こうしてください。
薄い本を選ぶ。
200ページ以下の文庫。読み終わる体験が何より効きます。「1冊読み切った」という手応えが、次の1冊を引っ張ってくれる。
面白そうな本を選ぶ。
ためになりそうな本ではなく。同調査でも、本を選ぶ方法の1位は「書店で実際に手に取って選ぶ」(57.9%)でした。ネットのランキングより、平台で手が伸びた本のほうが最後まで読めます。
図書館を先に使う。
失敗しても損がゼロなので、合わない本をさっさと閉じられる。この「気軽に見切りをつけられる」感覚が、初心者にはとても大事です。
読む時間を先に決める。
「空いた時間に読む」は永久に来ません。私は寝る前の20分に固定しました。枕元に本を置いて、スマホは部屋の反対側で充電する。それだけです。
慣れてきたら、読書記録アプリを入れてみてください。ブクログか読書メーターが定番。本棚が埋まっていくのが、思った以上にモチベーションになります。
費用 ── ゼロ円でも、月3,000円でも成立する
ここが検索でもよく調べられている部分なので、具体的に書きます。
本そのもの
出版科学研究所の集計では、新刊単行本の平均価格は1,500円台、新刊文庫本は800円前後。文庫中心なら月2冊で1,600円ほどです。中古書店やフリマアプリを使えば、この半分以下に落とせます。
サブスク
Kindle Unlimitedが月額980円(税込)で対象書籍が読み放題。オーディオブックのAudibleプレミアムプランは月額1,500円(税込)です。どちらも無料体験があるので、まず試してから決めるのが無難。ただ、読み放題は「対象になっている本」の中から選ぶことになるので、読みたい本がはっきりしている人には向きません。
図書館:0円
そして最近効いてくるのが電子図書館です。国立国会図書館の情報によれば、2026年1月時点で電子書籍貸出サービスを導入している自治体は611(全自治体の34.2%)。5年で約4倍に増えました。スマホから深夜に借りて、返却忘れもない。お住まいの自治体名+「電子図書館」で検索してみてください。
周辺の道具
これは沼です。私が買ってよかったのは、クリップ式の読書灯(1,500円前後)と書見台(2,000〜4,000円)の二つだけ。電子書籍リーダーは1万円台からありますが、これは「紙で年30冊以上読むようになってから」で十分間に合います。
まとめると、年間0円から3万円くらいのレンジ。趣味としてはかなり安い部類です。
続けるコツ ── つまらない本は、閉じていい
続かない人の共通点は、真面目すぎることだと思っています。
司書のナンシー・パールという人が提唱した「50ページのルール」があります。50歳未満なら50ページ読んで合わなければやめる。50歳以上なら、100から年齢を引いたページ数だけ読めばいい。歳をとるほど残り時間は短いのだから、という理屈です。これを知ってから、私の読書量は明らかに増えました。やめる技術は、読む技術の一部です。
他に効いたことをいくつか
同時に3冊並行して読む。気分に合う本が必ず一冊はある状態を作ると、「読む気がしない日」がほぼ消えます。小説・新書・エッセイの三本立てが個人的なベスト。
記録は一行でいい。長い感想を書こうとした年は、記録が面倒で読書自体が止まりました。今は「主人公が最後に電車に乗る場面がよかった」程度。それでも半年後に読み返すと、ちゃんと思い出せます。
人と話す場に出る。読書会は続ける装置として優秀です。たとえば猫町倶楽部のように、オンライン開催で初心者限定の回を設けているコミュニティもあります(オンライン参加は無料〜1,000円台の回が多い)。「来週までに読まないと話せない」という軽い締め切りが、驚くほど効きます。
積読を責めない。積読は失敗の証拠ではなく、未来の選択肢です。棚に10冊積んである状態は、10通りの気分に備えているということ。ここを罪悪感にすると、本を買うこと自体が嫌になります。
向いている人
一人の時間が好きな人。というより、一人の時間が必要な人。読書は本質的に孤独な作業なので、これが苦にならないことは大きな適性です。
好奇心の方向がバラバラな人も向いています。昆虫にも中世史にも量子力学にも中途半端に興味がある、みたいなタイプ。読書はその全部を安く試させてくれます。
あとは、結果がすぐ出なくても平気な人。読書の効果は、半年後にふと「あの本に書いてあったな」と思い出す形で現れます。即効性を求めない気質のほうが、確実に続きます。
通勤時間が長い人、寝つきが悪い人にもすすめたい。空白の時間と相性がいい趣味です。
向いていない人
はっきり書きます。成果や自己成長を主目的にすると、まず続きません。 「読書で年収を上げる」から入った人が半年後も読んでいるのを、私はあまり見たことがない。楽しいから読む、が結局いちばん強いです。
体を動かして発散したいタイプの人にも、あまり向きません。読書はストレスの「沈静」には効きますが、「発散」には向かない。この場合はスポーツと組み合わせたほうが幸せになれます。
誰かと一緒に盛り上がりたい人も、そのままでは物足りないはず。ただしこれは読書会やSNSで解決できるので、向いていないというより「工夫が必要」に近い。
視覚的な疲れが強い人、活字を追うのが身体的につらい人。これは無理をしないでほしい。オーディオブックという抜け道があります。耳で聴くのも立派な読書だと、私は思っています。
よくある疑問に短く答えます
- 何冊読めば「趣味は読書」と名乗れる?
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冊数は関係ありません。ただ現実的な目安を言うなら、月1冊読んでいれば日本人の上位4割弱です。堂々と名乗ってください。
- 面接で「趣味は読書」はアリ?
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アリです。ただし「最近読んだ本は?」に答えられないと逆効果になります。1冊、具体的に語れる本を用意しておけばいい。
- 漫画は読書に入る?
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私は入ると思っています。統計上は除外されることが多いですが、それは調査の都合であって、あなたの趣味の定義とは別の話です。
- 速読は必要?
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いりません。速く読む練習より、合わない本を早く閉じる練習のほうが、読める冊数は増えます。
おわりに
紙と電子を合わせた出版市場は、2025年で約1兆5,462億円。ピーク時の6割ほどまで縮んでいます。本は静かに追い詰められている、と言ってもいい。
でも、だからこそ。みんながスクロールしている横で、ページをめくっている人の時間の質は、たぶん少し違います。
最初の1冊は、薄くて、面白そうで、ためにならなそうな本を。それが結局、いちばん遠くまで連れて行ってくれます。
